導入事例

OMソーラーからOMXへの改修で365日豊かな温熱環境へ

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OMX 住まい手の声

山口県山口市 芳西さま

 

 

「これはいける」

数年前、OMソーラーの実証実験のデータを見た瞬間、そう確信した芳西さん。

芳西さんは、山口県のOMソーラー会員工務店、株式会社安成工務店に在籍する設計士。15年前、OMソーラーの家を自身で設計し、家族4人で暮らしてきました。

OMソーラーの実証実験は、2014年から2017年にかけて、全国10箇所の新築、改修住宅を使って、東京大学前研究室とともに一年を通じて省エネルギーで暮らせる住環境の開発のために行っていた実験で、安成工務店のモデルハウスもその内のひとつ。芳西さんは、この計測データが夏冬や昼夜の室温差が少ない温熱環境を示しているを目の当たりにして、日本のこれからの住環境への希望を抱きました。その後、実証実験を経て開発されたOMXの試作機で自宅を改修。全面的に開発に協力しようという芳西さんの期待にも応えるように、OMXの現在の制御システムは完成していきました。

 

 

芳西さんご夫妻。娘さん2人は現在は実家を離れ、夫婦二人暮らしを満喫しています。

 

 

自宅の夏の暑さ対策、エネルギー自給、自宅の課題が背中を押した

 

芳西さんがOMXに改修しようと思ったのは、自宅の課題もあったからでした。

新築した当時は夏も今ほど暑くなく、風の通り道を考えて設計したこともあり、エアコンがなくても過ごせる家でした。それが、ここ数年で状況は変わり、扇風機と冷凍庫で凍らせた氷枕では涼を取れなくなり、衣類は1日に3回以上洗濯しなくては暮らせないほどに。

このような夏の住環境は、関節リウマチを持つ芳西さんの奥さまにとってはさらに大変なこと、「階段の4段目くらいが限界。それより上は暑すぎて。2階に用事があっても辛くて上がれないから、主人に用事を頼んでいたの」といいます。芳西さんは、冷房の必要に迫られ家電量販店にも足を運び始めていました。

「年々夏が暑くなっている気がします。それに、今後のことを考えると自宅で使うエネルギーは賄えるようにしたい。」その2つを同時に解決する方法として、太陽熱利用も兼ねることができる太陽光発電パネルを屋根に設置して、OMXへ改修することが最適だと判断します。

 

 

芳西さんは、OMXへの改修と同時に、自宅の屋根に太陽熱利用も兼ねることができる太陽光発電パネルを設置した。屋根面の断熱強化も同時に施されている。

 

 

改修のために大切な断熱の考え方

 

OMソーラーからOMXへ改修するには、建物の構造上、絶対にクリアしなければならない条件が2つあります。
ひとつは、小屋裏がOMXの機器やダクトが設置できるサイズであること。

もうひとつは断熱。床下に断熱材を敷設施工のできるスペースがあり、屋根も断熱施工ができること。

OMソーラーより機器のサイズが大きいOMX。芳西さんの家では、小屋裏のサイズはクリアしましたが、小屋裏へ機器を運ぶ出入口が扉も外さなくてはならないほどぎりぎりでした。OMXを設置するには、小屋裏のサイズは幅3.7m奥行2.2m天井高1.2m以上、搬入出入口は幅85cm×高さ60cm以上必要です。

 

床下に敷設した断熱材。芳西さん自ら床下にもぐり敷き詰めた。床面から基礎までの高さに人が入れないと施工できず、床を剥がすなど、大掛かりな改修となってしまう。

 

床下に敷設した断熱材。芳西さん自ら床下にもぐり敷き詰めた。床面から基礎までの高さに人が入れないと施工できず、床を剥がすなど、大掛かりな改修となってしまう。

床下に断熱材を敷設施工することは、これまでの基礎で蓄熱するOMソーラーと大きく異なる点です。OMソーラーは太陽の熱を住宅内に取り込み、床下の基礎で蓄熱したうえ、夜間にかけて放熱するしくみでしたが、OMXは太陽熱も取り込みながらヒートポンプ、つまり電気を使って暖冷房します。どの程度、断熱・気密性能を上げるかは月々の電気代と相関関係にあります。

芳西さんは、家の断熱改修について主に3つのテーマで考えました。第一に、床下の断熱材敷設とともに屋根の断熱を強化しています。OMソーラーの集熱面を全面的に改修して太陽光発電パネルを設置する際に実施しました。

 

 

2つめに、窓の断熱性能を上げています。窓からの熱損失の大きさはよく知られるようになりましたが、芳西さんは、窓ガラスを交換するという方法を選択しました。「窓を交換するというと値段が高いイメージがあるでしょう、でも窓枠は現在使っているものをそのまま使って、窓ガラスのみ断熱性能の高いものに交換すると、意外と高くないんです」。窓ガラスが変えられないところには、建具にポリカーボネートを貼るという工夫もしています。

 

左:窓枠はそのまま、窓ガラスの性能をあげ、アルゴンガス入りのペアガラスにした。以前は、冬に窓辺に立つとひんやりと冷気を感じたが、現在は軽減されているという。

右:ポリカーボネートを建具に貼るだけでも断熱性能は上げられる。

 

 

3つめは、家の中で改修の範囲を明確に決めること。芳西さんは、現在実家を離れて暮らす娘さん2人の部屋は改修しないと決めました。範囲を狭めることは、改修費用だけでなく、月々の電気代を抑えることにつながります。

 

奥が娘さん2人の部屋。窓ガラスの性能は上げず、夏や冬といった、暖冷房の負荷の大きい時期には、扉を閉めて、使う部屋に限定して暖冷房しています。

 

 

OMXがもたらしたのは、快適な温熱環境と空気質

 

芳西さんの家は、至る所に計測器が設置されて研究チームに計測データが届くしくみになっています。そのため、床や窓の側など、計測機をひょいと覗くだけで室温がわかります。この取材をしている9月上旬、室温は、1、2階どの部屋にいても26℃に保たれていました。奥さまは快適な室温が保たれていることについて、「夕方買い物をして家に帰るとまた汗をかくのか、とこれまでは気合いを入れて帰宅していましたが、涼しい家に帰れるのが楽しみになったことが嬉しい」と話します。また、嬉しい変化はこれだけではありませんでした。晩ご飯の支度をしたあと揚げ物などの匂いが気になっていた奥さまでしたが、運転中熱交換換気をするOMXの換気の効果で、匂いが一度も気にならなくなったといいます。

 
 

上:窓辺に置かれた計測器 

中央:奥のご夫妻の寝室に夏の冷房の空気を送るため、扇風機が活躍している。 

下:OMXへ改修して、室内が涼しくなったことで、寝室の東の窓からの朝の熱気が気になるようになり、急遽よしずを置いた。

 
 

芳西さんの家の電気代は、OMXを導入した2018年8月は11,153円。暑さを我慢して冷房設備のない暮らしをしていた昨年の同時期は8,411円。2,742円でこの快適さが得られるうえ、太陽光発電の売電が18,704円あり7,551円の黒字になるそうです。

これから10年、15年先、電気料金も夏の気温も上がっていく可能性は否めず、省エネとともに、快適な住環境への意識はますます高まっていきます。芳西さんは今回行った改修についてこのように話します。「およそ15年でエアコン、給湯など設備も交換となることを考えると、我が家にとっては、いい改修だったと思います。」

「ご近所の方が家に集まられた時にも、この家の気持ち良さが話題になって。そのうち地域の集会所みたいになるんじゃないかな。」日本のこれからの住環境をいち早く導入して暮らす芳西さんご夫妻は、その暮らしぶりからも、未来の楽しいコミュニティのありかたを予感させてくれます。

 

 

本テキストは芳西さんの家の改修内容を中心にまとめています。OMXの家での暮らしを取材した記事はこちら

 

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